心の中で懇願する想い。
俺を見て?
俺の傍にいて?
俺だけのもので、いて…。
そう赦しを乞うのは…罪でしょうか?
自分のことなのに、傷付け過ぎて訳が分からない。
だけど、これだけははっきりとした。
俺はもう、誰にも恋はしない。
誰も好きにはなれない。
「…じゃあ、まぁ…よろしく、ね」
なんて。
俺の元から離れて行くななの手を掴んでしまいそうになって、寸前で止めた。
今更、引き止めて何を言うつもり?
どうせ、嫌われたくないと、何も言えない癖に。
俺は、自嘲気味に笑って、ぼそっと言葉を吐き出した。
「……終わった…」
そうでもしないと泣いてしまいそうだったから。
くしゃり、と髪を掴んで溜息を吐くと、後ろから声を掛けられた。
「凌太」
「…瑶?」
「良かった、すぐに見付けられて。明日のデートのことなんだけど…」
「…それ、なんだけどさ…」
「…行かない、なんて言わないでよ。そんなの許せない」
「…分かった」
自分が辛いから、自分と同じ思いをして欲しくないと思うのに。
実際は、瑶のことを思い切り傷付けていて、こんな悲しい顔をさせてまでこの関係を続けるなんて出来ない。
そう、決心した。
甘えたままじゃいけない。
現状から目を瞑っちゃいけないんだ。
「じゃあ…明日、昼ごろ、な」
それだけ告げて、俺は瑶に背を向けた。
瑶が、どんな顔でそんな俺を見つめていたのかなんて考えもせずに。