少し色素の薄いストレートのボブヘア。
それを耳に掛けると見える首筋の小さなホクロがなんともセクシーで。
スッと切れた瞳はまるで海外モデルのように彫りが深く、吸い込まれそうな程澄んでいる。
そして、陶器のような白い肌は夏の紫外線にもビクともせず、クラスの男子の間では、「白雪姫」なんて呼ばれてる。

その、眠りを覚ます王子の役は俺、なんですけど…。

物心付いた時には既にななのことしか、見えてなかった。
だから、ななもそうだとずっと思ってたのに…。

「りょーた!私、好きな人、出来た…かも」

その一言はどんな爆弾よりも破壊力があった。

「…え…?」

「だからっ!好きな人、出来たって…」

惜し気もなく頬を染めて、そう言ったななは俺の知らない「女の子」の顔で、俺は酷く動揺した。

「…誰、なの…?」

自分でも情けないくらいに、引き攣った声が出た。

「…誰にも言わない?…笑わない?」

「う、ん」

ななは、そんなオレなんてお構いなしに言葉を続ける。

「2年の、青木先パイ…」

名前を口にするだけで、しゅーっと頭から湯気が出ているような、そんなななを、まるで今までと違う生き物を見るような顔で見ていた。

「青木先パイって…。確か、バスケ部の?」

「そう!凄いステキなのっ!」

あー…。
この先の言葉なんて聞きたくないよ。

「だから、りょーた、応援してよね!」

やっぱり、そういう流れになっちゃうんだから。