そして、それから何日かしての放課後。
いつも日課のようにして登下校していたりょーたに、委員会が終ったから先に帰ると言いに体育館に行くと。


入り口に立った瞬間。

「あぶない!」

そう叫ばれて、身を固くした。
咄嗟に瞑った瞳を恐る恐る開けてみると、とんとんたたん…と足元にバスケットボールが転がっていてびっくりした。

更に…。

「…え?」

何故か、私の体をドアに押し付けるようにしている人がいて、どきん、と胸が鳴った…ような気がする。

「…っ。大丈夫か?怪我ない?ったく、おい!あぶねぇぞ!気をつけろよ!」

そう、コートの中へ声を張り上げているこの人は…。

「ごめんな?びっくりしたろ?でも、こっちから入ると今みたいにボール飛んで来るから、今度から気を付けた方がいいよ」

にっこりとキラキラビームを放ちながら、そう言うと、『おーい!青木ー!』という顧問の先生らしき声に、

「あ、ごめん。呼ばれてる。じゃーな!」

とだけ私に告げて、コートに戻って行ってしまった。

「…あ、おき…さん…?」

今起きた出来事を頭の中で整理して、その中で知り得た情報…は、名前だけ。
でも、それだけで十分私には効果があった。

「え?何コレ…へんなの。ドキドキする。…救心必要とか…?」

そう呟いて、制服の胸の辺りをぎゅうっと掴む。

まさに、これが私の恋の始まりだとはその時は気付かなかったから…。