そう言って、微笑み合うと、私達は、それから他愛もない話をしながら学校へと向かった。
すぐに、丁度、昼休みを半分くらい過ぎた所で、教室に入ると綾乃と香坂くんが意味ありげな視線を私達に投げて来る。


「よう。凌太。久々の日本で時差ボケかー?」

「日本にいるのに、時差ボケしてる子もいるみたいねー?」


からかわれると覚悟していても、本当にそうされると、どうしていいか分からなくなる。
言い返す言葉が上手く思い付かなくて、オロオロする私とは対照的に、りょーたはからかってくる二人をスマートにかわして、私を席へとエスコートしてくれた。


「ちぇー。からかいがいのないヤツだなー…凌太は。」

「まぁ、仁と違って、場数踏んできてるからね」

「綾乃ひでぇ…」


そんな二人のやり取りを耳にして、あぁ、香坂くんが綾乃の彼氏なのか、とか今更ながらに納得した。
本当に、今まで私どれくらい周囲に興味がなかったんだろう。


どれくらい、りょーたの繊細な心を、傷つけてきたんだろう。


「…なな?」

「…りょーた、ごめん」


そうすまなそうに呟いた私にりょーたは黙って微笑んでから、ぽんぽんと髪を撫でてくれた。