「…凌太…?」


ぐるぐると考えていたら、意識を戻した親父から声を掛けられた。
俺は、ハッとして親父の顔を覗き込む。


「…親父?…気分は、どう?少しは楽になってきた?アンディから、痛み止めでかなりキツいって聞いた」

「あぁ。…大丈夫だ。お前達のお陰だよ…」


そこで、俺は意を決して自分の気持ちを親父に話そうとした。


「あの、さ?…親父…俺…」

「分かってるよ…お前は一旦日本へ戻りなさい」

「……え?」

「私のせいで、お前の自由を奪うつもりはないさ」

「でも…」


そんなつもりはないと言いたかったのに、親父は俺の事を真っ直ぐに見つめてこう言った。


「…とりあえず、一度日本へ戻って…きちんと気持ちに整理を付けてから…出来ればこっちに戻ってきて欲しい」

「う、ん…」

「アンディにチケットの手配をして貰うように頼むから。心配するな、凌太…自分に素直になって生きていく事も一つの術だよ…」

「親父…」


そうだった。
親父はいつもいつも俺の事をこうして励ましていてくれて。
どんな人よりも俺を応援していてくれた。
そんな親父だからこそ、離れてたって俺は今まで尊敬出来たんだ。


「…分かったよ。整理、付けて来る。でも、必ずこっちに帰ってくるから。無理、しないでくれよな…?」

「ああ。約束するよ」


そうして、俺は親父の左手にそっと触れて、祈りを込めた。


どうか、また。
この魔法みたいに温かく大きな腕が、ちゃんと動きますように、と…。