現地へ到着すると、母さんと親父の仕事のパートナーだという男性が俺を迎えてくれて。


「今、お父さん集中治療室にいるの…っ」


震える声で、それだけを言うと俯いてしまう母さん。

一緒に病院まで送ってくれたその男性…アンディは、はっきりした日本語で「沢木は大丈夫だ」と励ましてくれた。


親父は今、大きな遺跡の調査研究をしていて、そのプロジェクトは佳境に迫っていたのだけれど、なかなかその先が進展しなくなった事にかなり責任を感じていたらしい。

それで、毎日のように一人夜遅くまで現場に残り、研究に明け暮れていたそうだ。

そこで、没頭する余り、高い位置から転落し頭を強打した。

今は昏睡状態が続いていて、病室に入ると、沢山の管でベッドに繋がれている親父の姿が見えた。


「…凌太っ…お母さん、もうどうしたらいいか…」

「…大丈夫。親父は、大丈夫だよ、母さん…」


小さな背中に手をやって、不安そうに俺を見上げるかあさんを元気付けた。