「はぁ…ずるいなぁ…凌太は。こんなに良い女フって、こんなに可愛い子泣かせて…。戻って来たら二人で殴ってやろう。ね?」


「だから、もう泣かないでよ?」と、先パイはそう言うと、もう一度私の頭を2,3回撫でて「帰ろっか」と言ってくれた。




好き、という詞を…。
願うならば、もう一度りょーたから、聴きたい。
その優しい顔で。
温かな、穏やかな声で…。



もう一度だけで、いい。


りょーた、私を呼んで。
お願いだから、私の事を手放さないで。
都合のいい祈りだと分かってる。


だけど、自分の気持ちに気付いてしまった今…。
この想いは止められないから。


りょーた。
りょーた。

早く、戻って来て。
私の隣に帰って来て。
出来るなら、変わらない笑顔を見せてよ。



「せめて、好きだってことだけでも…伝えさせてよ…」


私は白い息を地面に落として、呟いた。