頬がまだ濡れていた。
慌てて手の甲で拭う。
「……だよな。走って逃げるくらい迷惑ってことだよな」
タメ息交じりの黎の声。
「え?」
「……違うのか?」
「そんなわけないよっ……」
「じゃあ、なんでさっき逃げたんだよ。明らかに、俺を避けたんだろ」
「そうじゃないよ。追っ手が来たのかと……」
「は?オマエ、追われてんの?」
「ちがうけどっ……。そういう危険があるって、昔からお母さんに言われてたから。ほんとに来たのかと思って……ちょっと怖かった」
「……ちょっと、じゃねえだろ」
グッと、腕を引かれ、そのまま黎に抱きしめられた。
「強がってばっかいんじゃねえよ」
次に振って来たのは、とても優しい言葉だった。



