それから数日後。
「おかえり。今日は早いんだね」
午後6時。
リビングに入ってきたのは、制服姿のお兄ちゃん。
いつもはどこで何をしているのか、帰宅は遅いのに。
「…………」
返事を期待していたわけじゃないけど、案の定。
いつも通りブラックオーラを纏っているお兄ちゃんは、
ソファでテレビを見ているあたしを素通りすると、冷蔵庫からペットボトルの水をゴクゴクと喉へ流し込む。
そんなの、誰でもするだろう当たり前の姿なのに。
自分のお兄ちゃんながら、とてもカッコイイと思う。
彼女はいるのかな……なんて思って首を振る。
こんな無愛想な人。
ただでさえ本郷家の跡取りなんだし、お兄ちゃんなんかと付き合いたい女の子がいるわけないよね。