胸がバクバクしているのは。 部屋へ駆けこんだからじゃない。 お母さんや旬さんの前では、普通を装っていたつもりだったのに。 『虹池で何があった』 テルさんの冷静な声で、すべてが引き戻された。 もっと言えば、テルさんとあの彼が少しだけダブって見えたから……。 唇に、触れてみる。 あたしの唇が、彼の唇と……。 つい1秒前まで触れていたかのように、鮮明に思い出される感覚。 濡れた唇が、絡みつくように密着して……。 「……っ」 思い出しただけで、頭が沸騰しそうになる。 ああ、もう。