ブランコに乗って、物思いにふける。
「はぁーーーー」
タメ息が、白く濁る。
今日という今日は、ほんとに家に帰りたくない。
このまま、王子様が現れてあたしを攫ってくれないかなぁ。
小さい頃、お母さんが読んでくれたシンデレラに憧れていた。
『わたしにも、おうじさま、くる?』
『もちろん。女の子は、いつか必ず王子様に見つけてもらえるの』
お母さんも、お父さんという"王子様"に見つけてもらえたと、散々聞かされた。
大きくなった今は、王子様どころか"ヤクザ"だよ……というツッコミしかできないけど。
あたしには、本物の王子様がきっと迎えに来てくれる。
この窮屈な世界から連れ出してくれるの。
あたしは密かに、ずっとそれを信じて待っている。
ほんとのあたしは、誰よりも夢見がちな16歳。