「もしもしっ……」
万一、見張りがドアの外にいたら……の時を備えて小声で。
うっかり妙なことを話すと、お兄ちゃんに筒抜けになりかねないから。
『おう美月。今、家?』
「そうだよ。お兄ちゃんに部屋に閉じ込められてて外出れないんだからっ」
『だよな』
颯人は説明してくれた。
今日行った倉庫は、"灰雅"(ハイガ)という暴走族のたまり場だということ。
つまり、あそこに居たメンバーは、その暴走族に入っているということ。
驚くべきことに、その総長がお兄ちゃんで、黎は特攻隊長という危険なポジションにいる男だということ。
あまりの衝撃に、あたしはしばらく言葉を発せなかった。