誰も口を開かない。 水を打ったどころじゃない。 階段の下からも、物音がしなくなっている。 倉庫全体が凍り付いていた。 ーーーーと。 ゆっくり、黎が立ち上がった。 そして。 それは、黎とお兄ちゃんの視線がぶつかった瞬間だった。 ーーーガッ…!!!! 「お兄ちゃんっ!!!!!」 お兄ちゃんの拳が黎の頬めがけて飛んだのだ。 家が極道だとしても、実際、暴力などを目にする機会なんてなくて。 こんなものに免疫もなければ恐怖でしかないあたしは、悲鳴にも近い叫び声をあげた。