『もう、私の世界を壊さないで』

「っ……冬菜、俺はお前の世界を壊したかったわけじゃない!」

『もう、やめて』

「冬菜っ……」

名前を呼んで言葉を失った夏樹君。
あの日とは違って、今度は私から背を向けた。

これは惨めだと思いたくない、精一杯の私の意地だ。

「なら、冬菜はずっと一人ぼっちでいる気かよ!!」

夏樹君が私の背中に叫ぶ。
そうだよ、私と夏樹君の歩く道は一生交わらない。

私が辿った道を、どんなに夏樹君が追いかけてきても。
私に、立ち止まる意思も、振り返る意思もないから。

「俺は、冬菜を……どうすればっ」

夏樹君は、私を追いかけてこなかった。

でも、それでいい。
私が目指す先は、誰もいない場所であり、ひとりぼっちになるための道だから。



──だから、さよなら夏樹君。