お菓子の城



あの人が死んだら、私は思い出すだろう。

今日という日を。

それなりに弾んだ会話、隣同士のシャトルバス、2人揃って抽選に外れ、菓子細工を見てまわり、大道芸に拍手をし、えびフライを腹一杯食べた日を。

だから私は、吐く思いでえびフライを食べたんだ。

これが、最後だから。

私は、スマホの写真を開いた。

たくさんある、お菓子の写真。

その中の、たった1枚の写真。

お菓子の城の脇でこちらを向く、あの人。笑顔でも怒り顔でもない、私が急に撮るって言ったから、困り顔をしている。

鷹なのか鷲なのか。

そんなことはもう、どうだっていい。

いつまでも溶けることのない思い出が、そこにあればそれでいい。

きっと私は泣くだろう。

ひょっとしたら、お母さんの時より泣くような気がする。

ごめんね、お母さん。

悔しいけど今日、楽しかった。

この人が、私の父親なんだと思った。