驚いたことに、帰りの車の中でも会話は途切れなかった。
父の妹__私の叔母が病に伏しており、その遺産を巡った話や、それに関しての質問を投げかけてくる。
「争う財産ないで良かったな」
そこは半笑いしておく。
せめて葬式代は残してくれと。
あんな見も知らぬ大道芸人にお札をくれてやるくらいだから、望み薄だが。
「お前、なに歌うんや?」
「いろいろ」
「いろいろて、新しいのか?」
「__藤圭子とか」
そう答えると、大笑いした父が歌を口ずさみ出した。
悔しいが、うまい。
お母さんも本当に歌が上手な人だったけど、それ以上かもしれない。私が唯一、認めざるを得ない点だろう。
家の近所まで来ると、長い1日がやっと終わったという感慨深いものがこみ上げてくる。
それなりに楽しかったかも。
私が年を取ったせいかもしれないが、休日に親と過ごす時間って、意外と有意義なものかもしれない。こんな感じならまた__。
父が車から降りようと、ドアを開けた。



