「これやるわ」
私のお皿に乱暴に移された、1尾のえび。
「もうお腹いっぱいなんだけど」
「ビール飲んだら腹ふくれた」
「でも__」
我がお腹に尋ねてみたが、門前払いを食らった。とてもじゃないが、容量いっぱいだ。
それなのに私は、えびに喰らいついた。
もう考える暇を与えず、味わうなんて悠長なこともしていられない。
ただ、残してはいけない。
残しちゃいけない。
そんな思いに捉われ、尻尾まで咀嚼する。
気を抜けば、胃の中が逆流してしまいそうだが、いっそ全ての思いをぶちまけてしまいたいとも思う。純粋な憎しみ、お母さん、愛を乞うた日、なにもかも今ここで吐き出してやりたい‼︎
「ご馳走様」
でも私は飲み込んだ。
なぜなら。
此処に母は居ないからだ。
此処に居るのは私と父の、2人だけだからだ__。



