お菓子の城



「えびフライ、食うか?」

ご飯は中で食べず、出てから美味しいものを食べようということで意見は一致していた。

しかも父の奢りだという。

ガソリンといい、えびフライといい、父なりに気を遣っているのが可笑しくもあり、でも不愉快ではなかった。

母とよく来ていたという、老舗のえびフライ。

ぱっくり開いたえびが3尾。

それと父は生ビールを頼んだ。

内心、深いため息をつく。

今から、話がしつこくなるのを覚悟せねば。

ほら、お母さんと来たって、これで何度目?

友達としか来たことがない私への自慢?夫婦にしかない思い出があるって?思い出なら私のほうが__。

変な対抗意識を噛み砕くよう、えびにカブりつく。

「あの菓子の抽選はおかしい」

これも何度目だ。抽選ではなく、早い者勝ちだと言って聞かない。でも私たちより後の入場者が当たってたじゃない‼︎と遮ることもできたが、ここはおとなしくご飯をかきこむ。

口答えでもしようものなら、惨事を引き起こす。

家に帰るまでが遠足じゃないか。

まだ気は抜けない。