お菓子の城



そう、あの人はあんな人だった。

今だってお金がないくせに、変にカッコつけて。そのくせ気が小さい。そしてそれを隠そうとするあまり、声と顔で相手を威圧する。

それだけの人。

言い得て妙なのは、やはり妻だったからか。

それだけの人なのよ。

お母さんの口癖だった。だから放ってはおけなかったのだと。そう言いながら、放り出して先に逝ってしまったじゃない。私に「それだけの人」押し付けて。

一瞬だけ、お役御免した母を恨んだが、それは一瞬。

せめてなにかお菓子的なものを、と珍しいパフェを手に戻ると、父が芝生に座っていた。

老けたな。

それでも周りで行き交う父と同世代の中では、ひと際、若いだろう。あの桜色を着こなせはしない。

でも、私の知っている父からすれば、かなり老け込んだといってもいい。

どことなく、小さくなった気がする。

体はもとより、声も圧も、なにより「絶対」が絶対ではなくなったというか__。

「もう帰る?」

「お前はもうええのか?」

「__もういい」

「なら帰るか」

父が、芝生から立ち上がった。