展示会場を出ると、さらに人の波が膨れ上がっていた。
私たちは飲み込まれないように波から外れる。
ちょうどそこには小さな輪が出来上がっており、首を伸ばすと、円の中央に大道芸人が芸を披露していた。
どちらからともなく顔を見合わせ、輪の中に加わる。
軽快な音楽とともに、まだ若いパフォーマーが両手で水晶を器用に回しており、私もならって拍手をする。
「大したことないの」
いや、確かに私もそう思った。
思ったけど、勢い余って最前列に来てしまったし、周りの空気を乱さないよう__。
「拍手する価値もない」
決して手を叩かない、しかめっ面の父。
しかし次の瞬間、父は叫んだ。
パフォーマーが関節芸を披露し、手首を一回転させたからだ。強引に足首をひねり、肩を脱臼させ、それこそ私は手を叩くのも忘れ、痛みに顔を歪めた。
「拍手したらんかい!」
興奮している父に肩を小突かれ、仕方なしに手を叩く。
隣でこれ以上ないくらいの賛辞を送っている、父。
凄い凄いを連発し、それを聞かされている私の拍手は次第に大きくなっていた__。



