ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「姿を現した雫よ、彼女に安らぎをもたらし、魔力を沈めたまえ!」
 
詠唱と共に雫は輝きを更に増す。その輝きに目を細め見つめたまま優しく言う。

「女神の詩(デーアディスト)」
 
女神の詩により雫は金色の粉に包まれる。粉を纏った雫はそのままオフィーリアの中へとゆっくり戻った。
 
雫が体内に戻り青白い輝きが消えたことを確認した俺はその場に座り込んだ。

「……はあ」
 
これで道化師たちがオフィーリアを狙っている理由が分かった。それは彼女の雫だ。
 
オフィーリアが持つ雫は俺たちが持つ雫とは何かが違う。そうでなければ、あんな膨大な魔力を秘めているわけがない。

この魔力を使えば島三つ分は容易く吹き飛ばす事が出来るだろう……いや、きっとそれ以上な事も出来る。

俺は立ち上がり彼女の顔を覗き込む。

「大丈夫そうだな」
 
女神の詩の効果が効いているのか、オフィーリアはさっきとは違いとても穏やかな表情を浮かべて眠っている。当分の間、オフィーリアの雫も大人しくしているだろう。

「うっ……」

「オフィーリア! 大丈夫か?」
 
オフィーリアは気がついたのか、閉じていた目を薄っすらと開く。

「……ブラッド?」

彼女は俺の存在を確かめるように手を伸ばしてきた。俺はその手を取り問う。

「俺のことが分かるな?」
 
俺の言葉に彼女は軽く頷くと何かを思い出したように慌てて体を起こした。

「そうだ! 私……」
 
オフィーリアは俺から手を放すと自分の体を確かめるように胸元に手を置いた。

その様子に俺は目を細めて様子を伺う。

「……生きてる?」
 
目を瞬かせるオフィーリアは小さく呟いた。

「なに物騒なこと言ってるんだよ? お前はちゃんと生きてるだろ」

「でも発作が!」

「あれは俺が止めた」

「止めた!?」
 
オフィーリアは信じられないとでも言うような表情で見てくる。
 
確かに他の人からしたら俺のとった行動は信じられないものだろう。

だが現にこうしてオフィーリアの発作は止まっている。俺のやったことに間違いはないんだ。