ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

「お、俺が探している通り魔は居なかったんだよ」

「居なかった?」
 
首を傾げるレオンハルトに俺は言葉を続ける。

「お前から依頼を受けた時、その日の内に突き出す予定だったんだよ。でも予定が変わったっていうか……」
 
レオンハルトは何かを察したのか軽く息を着くと言う。

「つまり通り魔だと思っていた人が実はオフィーリアさんで、捕まえようとしたお前は大爆発なんていう魔法を彼女にぶつけたと」

「……はい」
 
俺は体を縮こませて頷いた。そんな俺に呆れるようにレオンハルトは深々と溜め息を吐く。そして俺が一番言われたくないことを口にする。

「お前……【最低だな】」

「ぐはっ!」
 
その言葉が鋭い矢となり、いくつも俺の体に突き刺さった。

「【女の子はみんな俺にとって女神だ】って言っているやつが、その女神本人に大爆発なんて言う魔法をぶつけるとは」

「だ……だって! 最初は男だと思っていたんだ! いきなり襲い掛かってくるし、魔法をぶつけて対処するのは当たり前だろ!」

「だからって大爆発以外にも魔法はいくつもあるだろ」

「うっ……」

「例えば眠りの粉(スリープ)の魔法を使って眠らせたり、体術を使って抑えたりとか手段は色々とあるだろ? それにお前は魔法以外にも剣術、体術、武術とか使えるんだし」

「そ、そうだけど!」
 
剣術だって剣がないと使えないし、体術と武術だって相手が向かって来ないと使えない。それだったら魔法で対処する方が早いんだよ。

「どうせ通り魔だってオフィーリアさんがどうにかしたんだろ?」

「よ、よく分かったな」

「それくらい少し考えれば分かる。それで警察に突き出すわけにも行かないから、お前の屋敷に住むことになってるんだろ?」

「ま、まあな……」
 
本当はそれ以外にも理由があるんだけど、これ以上は言わない方が良いな。

「だから通り魔の件は解決したってことにしてくれ。ここから先は俺一人で調査するから」
 
でも機密情報扱いになっているのに、宝石のことを教えてくれたことだけでも助かる。

「危なくなったら逃げろよ」

「ああ」
 
ソファから立ち上がり病室の入り口へと向かう。

「あ、そうだった」
 
俺は一つ言い忘れたことを思い出し振り返って言う。

「お前さ入院中に病室から抜け出すことはやめてくれよ」

「お前じゃないんだし、そんなことするわけないだろ?」
 
レオンハルトに深々と溜め息を吐かれ殺意が芽生える。
 
【お前じゃないんだし】ってどういう意味だ……!

「ミリィのこと頼むな」

「ああ」
 
何か一言言い返したかったが言葉が出てこず、俺は真っ直ぐ屋敷に向かっている。

「オフィーリアと道化師か……」
 
そういえばオフィーリアから道化師に狙われている理由をちゃんと聞いていなかった。てっきりあの髪色が珍しいという理由からだと思っていたけどそれは違うように思える。