ヴェルト・マギーア 星の涙 ACT.1

まだオフィーリアには話していないが、虹の花というのは人々の雫の代わりとなる魔力を持った花の事だ。

過去に虹の花を体内に宿した人が、魔法を使う事が出来たと言われている。
 
もし星の涙と虹の花を交換する事が出来れば、オフィーリアが長く生きられると思った。命の宝石じゃなくても虹の花さえあれば。

「やっぱギルに聞いた方が良いのか?」
 
そう小さく呟いたとき扉の外からどすの利いた声が消えた。

「いい加減にしろ!」
 
その声に俺の肩が跳ね上がる。

「この声って?」
 
急いで扉に駆け寄り薄っすらと開けて外の様子を伺った。

「僕はこれから大事な用事があるんだ。その後でも良いだろ?!」
 
やっぱり廊下で誰かと言い合いをしていたのは、不機嫌マックスのギルことギルバートだった。

「ですから、少しの時間でも良いんです!」

「しつこんだよ君は!」
 
ギルと言い合いをしている人は前に一度見たことがある。確かギルの助手をしているナタリィさんだったよな?

「これから大切な面会があるんだよ!」
 
ギルは顳かみをピクピクさせながらこちらに向かって歩いて来る。

「ま、まずい!」
 
覗いていたなんて知られたらギルに何て言われるか!
 
俺は慌てて扉から離れる。直ぐ手元にあった魔法書を一冊掴んで適当なページを開く。

「ギル! こちらの方が大切です!」

「その名で呼ぶな! そんなの後からいくらでも巻き返せる。僕を誰だと思っているんだ」

「た、確かにギル……ギルバートさんは優秀です。若くして科学者となられたんですから」

「分かってるなら僕の事は放って置いてくれ!」
 
ギルはそう叫ぶと図書室の扉を勢い良く開け、ナタリィさんに有無を言わせる前に閉めてしまった。