フリードは一瞬考えた。
父が気を使ったのかもしれないが、こんな自分を馬鹿にしてくるような人間と遊んでいてはこちらも疲れるだけだ。さっさと喧嘩別れでもしたほうがいいに決まっている。だとすれば、この真面目そうなやつが嫌うことをやらなきゃいけない。


「探検をしよう」

「は?」

「いくぞ、ディルク。こっちだ」

「えっつ、ちょ、フリード様」


フリードがディルクの手を引いて最初に来たのは、屋根裏部屋だ。

明らかに物置扱いになっていて、壁に立てかけられた絵画には蜘蛛の巣が張っているし、床も出入りがあるのだろう入口付近を除いて、埃が絨毯のように積もっている。

ディルクは入るのも嫌だとばかりに梯子の一番上で止まったが、フリードは全く気にせず中に入っていった。


「ここは宝の山だぞ。昔の絵画に昔の衣装。錆びた剣。ほら、格好いいだろ?」


刃こぼれをしている刀を振り回すフリードに、ディルクは眉を寄せる。


「危ないからおやめください」

「平気だよ」

「それで怪我をされたら僕の責任になります。こっちが迷惑です」


眉を寄せ、本気で嫌そうに言ったディルクを見て、フリードは逆に面白くなる。


「お前は面白いなぁ。みんな俺の機嫌をとろうとするのに」

「だからそんなに奔放に育ったんですね。結構なことです。しかし僕は関わり合いたくない。あなたにはこれが継承戦争時代のものだということも分からないんでしょう? 子供が遊びで触っていいものではありませんよ」

「継承……それはなんだ?」