「公爵位を受けるにあたり、妻を娶れと再三言われている。その前に、……絵の女性を見つけ出したい」
ようやくはっきりと目的を言ったクラウスに、ギュンターは呆れて言葉も出ない。
ああ、それを言うためだけに、俺を一週間も無駄な時間を使わされたのか。
「どんな女性ですの? 私にも見せてはいただけませんか?」
「ああ、コルネリア殿。あいにく絵師のフィーベが貸してもくれないものでね。東の宮に来てくれれば見せられるんだけど」
「ダメだ。コルネリアは今大事な時期だ。外出はできない」
仏頂面でギュンターが言うと、クラウスは弱みを見つけたとばかりに身を乗り出してくる。
「どうして? 貧血だと言っていたよね。そんなに悪いのかい? コルネリア殿」
「あ。……えっと。あの」
「わかった。懐妊だろう。君たちも結婚して二年だし、そろそろできてもおかしくない」
デリケートな話題をものともせず言ってのけるところは、さすがはクラウスと言ったところか。
まだ発覚したばかりの話だ。はたしてクラウスに教えてしまっていいものかと迷っていると、コルネリアから視線を感じる。どうやら、彼女のほうも同じように迷っているらしい。
「……そうだ。だがまだ発覚したばかりの大事な時期だ。大々的に公表するつもりはない。さて、いくらクラウスといえども、これ以上俺の妻を煩わせるのは許しがたいんだが?」
コルネリアは気まずそうに顔を上げる。
「大丈夫です。私は。……そのっ」
「俺が嫌なんだよ。誰にでも土足で踏み入れられたくないところはあるだろう? そもそも、俺は君のそんな姿をほかの男に見せるのが気に入らない」
コルネリアは夜着にガウンを羽織っただけだ。普通ならば他の男が見れるような姿ではない。
ギュンターの本気を感じ取って、クラウスが肩をすくめた。



