「ギュンター?」
心配させている、と思ったがギュンターも止まらなくなった。
「流産するほどつらい思いをさせていたのに気付かなかったのかと、俺はあの時ほど自分を情けなく思ったことはない。コルネリア、俺は君を守れる男でありたいんだよ」
ああ、自分もこれだけ不安だったのかと、ギュンターはいつも彼女を心配しながら気づく。
ギュンターが漏らした本音に、コルネリアの背筋がピンと伸びた。力強く、ギュンターの背中に手を回し、抱き返してくる。
「ごめんなさい、あなたをそんなに悲しませていたなんて。違うの。ここに、あなたの傍にいるのは本当に幸せなの。だからこそ、流産がショックだった。私、今度こそこの子を大切に守り、必ず産んで見せます。だから、男の子でも女の子でも、喜んでください」
「君との子供だ。嬉しくないわけがないだろう? 跡継ぎであろうとなかろうと関係ない」
ギュンターは慰められたような気持で、彼女と額を合わせる。
吐き出した互いの不安は、共有することで軽くなる。ふたりで抱えることはおそらくそれほど負担ではないだろう。
伯爵家の長男として生まれ、一番大切なのは伯爵家の繁栄と存続だと言い聞かされて育ってきた。
ギュンター自身、それが正しいと思って生きてきたはずだったのに。
今、コルネリアとの子が女の子だとしてもいいとさえ思っている。
無事に生まれ、コルネリアに幸福をもたらしてくれれば、それで十分だという気持ちだ。
恋を知ったのだとギュンターは思った。
伯爵家の存続は二の次でいい。それよりも妻の命が、妻の笑顔が大事だと思える。
そんな恋をしたのだと。



