そして彼らの結婚から半年ほどして、クレムラート家でエミーリアと夫の結婚披露晩さん会が開かれた。
招かれて訪れたギュンターはようやく人心地ついた。そのとき肩を並べて並んでいたふたりは、視線を交わし、時々恥じらいながらも言いたいことを言い合っていて、間違いなく愛し合っているのだろうと納得がいったからだ。

それをコルネリアにも話し、『エミーリアはクレムラート家でうまくやってるようだよ』と伝えたことで、ギュンターの中では妹のことは懸念事項から外れていた。しかし、コルネリアのほうはそれ以後も定期的に手紙を書いてくれたらしい。


「エミーリアはなんだって?」

「フリード様と乗馬をなされたそうです。今ではお転婆を隠すこともなく、自由に屋敷中を動き回っているらしいですわ」

「それはいい。フリード殿は案外懐深いな」

「大奥様もいらっしゃらないお屋敷ですものね。エミーリア様にはぴったりの嫁ぎ先で本当に良かった」


コルネリアはうれしそうに頬を染める。
しかしその言葉の端は引っかかる。なにせベルンシュタイン家は口うるさい大奥様が仕切っている屋敷だからだ。


「君は息苦しくはないかい? 母上がまた君にキツイことを言わなかった?」

「お義母様はあなたと一緒でしっかり者なんですわ。落ち度がないか、何に注意すべきなのか、私を心配して色々教えてくださっています」

「それを口うるさいと言うんだ」

「大丈夫です……私を気遣ってくださるってことだもの」

「君は自分を抑えすぎる。嫌なことは嫌と言って構わないよ」


ギュンターはため息をつく。

コルネリアはいつもこうなのだ。消して母のことを悪くは言わない。
それは彼女の長所であるだろうが、なんとなく歯がゆく感じてしまうのだ。