「邪魔なことなどひとつもない。具合はどうだ? 留守にしていて悪かった」

「……貧血ですわ。大したことありません。それより、クラウス様はお元気でした?」

「ああ。もう少し元気がないほうがいっそ良かったよ」


へらへらと笑うクラウスの顔を思い出し、ギュンターは眉間にしわを寄せる。
しかし、コルネリアは不満げな夫の顔を見てほほ笑んでいるではないか。
さっきまで困っていたのにと思うと、なぜ笑われるのか分からず、仏頂面になってしまう。


「なにかおかしいか?」

「あ、ごめんなさい? そつのないあなたにこんな顔をさせるのは、エミーリア様かクラウス殿下だけだなぁと思ったら、面白くなってしまいました」


クスクス、とコルネリアが小さな声で笑う。
不満げだったクラウスも、まあコルネリアが笑うのならばいいかという気になって表情を緩めた。


「私はしばらく外しますわね」


二コラがそう言い、ギュンターはその気遣いに感謝する。
そして、扉が閉まったのと同時に、前かがみになりコルネリアの唇を掬い取った。


「ん……」

「一週間も離れていると口寂しい」

「もう、冗談はやめてくださいませ」

「冗談じゃなく本気だけれどね」


コルネリアの頬に少し赤みが差したのを見て、ギュンターは口元を緩ませた。
もう少し堪能したいが体調不良の妻に無理もさせられない……と思ったところで彼女の傍にある便箋が目についた。