それから一時間と少し走り続けて、ギュンターとルッツは北西のベルンシュタイン領に到着した。領土内に入ってからさらに三十分。到着したベルンシュタイン家の玄関で、駆け付けた使用人たちに馬を任せ、執事を追い抜かすようにして中へ入っていく。


「コルネリアは?」

「奥様はお部屋でお休みになっています」

「容体は?」

「直接奥様からお聞きください」


返事もそこそこにギュンターは二階にある彼女の寝室の扉をノックした。
すると、出てきたのは彼女付きの侍女である二コラだ。目を丸くし、あんぐりと口を開けてギュンターを見上げる。


「まあ、もうお帰りになったんですか、ギュンター様」

「コルネリアはどうだ。知らせてくれて感謝している」

「そこまでお急ぎになるほどお悪いわけではありませんでしたのに。ただ、奥様があまりにギュンター様の仕事の邪魔になっては……とご遠慮なさるので、余計な真似をしたまでですわ」

「二コラ」


部屋の奥から咎めるようなか細い声が聞こえる。ベッドが膨らんでいるところを見るとコルネリアが寝ているのだろう。


「起こしてしまいましたわね。コルネリア様、ギュンター様がお帰りですわ」


二コラはギュンターを招き入れると、ベッドの傍らまで行き、コルネリアが上半身を起こすのを手伝った。
今日のコルネリアは化粧っ気がなかった。いつもよりも青い顔で、ギュンターを見つけたとたんに眉を八の字にした。


「あなた。すみません、お仕事の邪魔をしてしまって」


ギュンターは用意された椅子に座り、困り顔のコルネリアの手を取った。