「やあ、軟禁されているんだって? フリード」


フリードの部屋の扉を開け、快活そうに笑ったのは、この屋敷を出ていったはずの叔父のアルベルトだ。年齢は二十三歳。結婚してここより北に屋敷を持っているが、子供ができたという話は聞かない。


「叔父上? どうしてここに?」

「誰も君に話を伝えるのを嫌がるものでね。僭越ながら俺が来たよ。知りたいことを教えてあげよう」


ディルクと出会う前、フリードは父よりもアルベルトに懐いていた。
久しぶりの心を許せる人物の登場に、ほっとしたフリードはアルベルトに縋りついた。


「ディルクは? ディルクはどうなったの?」

「ディルク……?」

「ドーレ男爵の長男だよ! 俺の友達なんだ」

「……ああ。そうか。……座って話そうか、フリード」


叔父はひと呼吸おくと、フリードをベッドに座らせ、自らも隣に座る。
アルベルトが座ればクッションはたわみ、フリードもバランスを崩す。まだ身の軽いフリードではこうはならない。フリードは無力な自分が情けなくて仕方なかった。


「……ドーレ男爵は爵位をはく奪された。加えて、当主を殺害した罪で囚われている。奥方は実家に帰るそうだよ。だからそのディルク君も一緒じゃないかな。妹さんがいたそうだね」

「そんな。だって事故だったんでしょう?」

「明らかにドーレ男爵の馬車が暴走していたらしいよ。それは殺意があったに違いないってリタ様が言い張ったらしい。……仕方ないよ。ドーレ子爵はアンドロシュ子爵の奥方と内通していたそうなんだ。リタ様……奥方様は不実には厳しい。……フリードに理解しろというのは難しいかもしれないけれど」


途中で泣き出したフリードを見て、アルベルトは優しく背中を撫でた。
ディルクに何もしてあげられない自分がもどかしく、閉じ込められている間に起った事の大きさに衝撃を受け、悲しくて悲しくて仕方なかった。