風薫る

突っ込まないように、慎重に、慎重に。慎重に、なんだろ。


ええと。


「だ、大胆なお母さんだね……?」

「木戸さん疑問符、疑問符ついてる」


指摘しつつ、黒瀬君が悪戯っぽく目をきらめかせる。


「自分の親ながらあれだけどさ、大胆すぎるのも考えものだよね。ね?」

「そうだねえ……、あっ」


ね、と笑顔につられて思わず同意しまった。


うわあ、やっちゃった……!


「わああ、ごめんね……! 大変失礼しました!」

「いや、俺が悪いから気にしないで、わざとやったし」


木戸さん粘るから、なんてひどいよ。


思わず脱力する。


だって、人のご両親のこと、悪く言えないでしょう。私の親のことは素敵って言ってくれたのに。


「黒瀬君だけ如才ない。褒めててずるい」


抗議すると、ええ? と返された。


「あーほら、俺の親は褒めどころがないから仕方ないんじゃないかな」

「そんなことな」

「はい無理しない」


気持ちは伝わったから。大丈夫だから、と宥められて諭されるものの、納得できないよ。


「…………」

「木戸さん、怒ってる?」

「…………」

「木戸さん?」

「…………じゃあ、黒瀬君を褒める」