放課後、新しくできた図書館まで、赤い夕焼けの中を影を踏み踏み一緒に歩く。


ゆっくりゆっくり足を進める黒瀬君の隣で、私もゆっくりゆっくり足を進める。


周りの視線はまだ気になるけれど、黒瀬君に教わった笑顔で乗り切れた。


大丈夫。大丈夫。


そうっと深呼吸してみる。


……大丈夫。


「何かお勧めの本ある?」


どきどきする心音を意識の端に追いやって、いつも通りの話題を振った。

うーん、そうだねえ、と瞬きをする黒瀬君。


「今映画化してるのは、木戸さん読んでるよね?」

「うん、読んでる」


そういう有名になるような素敵なお話は、大抵読んでしまっている。

よほどホラーが怖いとか、文が読みにくいとかでなければ、なるべく早く目を通すようにしているから。


読書をするには、物語を愛する意欲と、自分好みの物語を見つけられる目とがないと、なかなか面白いものを読むのは難しい。


映画化とか漫画化とか何かメディアミックスする前に、できることなら、そういう素敵なお話は読んでおきたいよね。


今回映画化した本は、初めはドラマ化したから、その時点で知って読んでいた。


高校生の二人が、少しずつ少しずつ距離を縮めていく話。


本で告白する場面が、私は一番好きだった。