「黒瀬君、一緒に図書館行かない?」


おそるおそるの提案に、黒瀬君はにっこり笑って頷いてくれた。


「もちろん。でも、いつにしようか」


本当は今日の放課後に行きたいけれど。


「今日はやっぱり、ちょっと難しいよね」

「テストだからね」


黒瀬君が残念そうに目を伏せた。


「テストなんだよね……」


いくら本好きでも、テスト期間は勉強するくらいの分別は持ち合わせている。


テストで悪い得点を取ってしまえば、自分の自由時間が減って、結果として読書時間も減るのは目に見えているから、というのがその分別をするのに必要な理由だけれど。


「テスト最終日に行くのは?」


あいてたら、と補足されて、勢いよく首を何度も縦に振った。


最終日は午前中に終わるし、次の日の準備がいらないから気が楽だし、今回は集会などもなかったはずだから、ちょうどいい。


「行く! 行こう!」


黒瀬君とのお出かけ。図書館巡り。

なんて素晴らしいんだ。


抑えきれない笑みが込み上げてきて、にこにこ笑顔になる。


「うわあうわあ嬉しいなあ、楽しみだなあ……!」


自分へのご褒美にすることが即決した。


テスト勉強を頑張ったら、きっと手に入る類いの。


俄然やる気が出た私は、現金だ。