「体の大きい方がメスです。まずはお互いの触覚で触れ合います。雄の鳴き声は、遠くで鳴いているコオロギの声と少し違うのがわかりますか?」
「うん。なんかちょっと優しい声?」
「そうです。人間も、近くにいるのと遠くにいるのとでは、声の大きさや話し方が変わるように、虫たちも声を使い分けているんです」
いつのまにか、私と虫屋も体をそばに寄せて2匹のコオロギを見ていた。
「このあとは?」
「このあと、ですか?」
虫屋が珍しく口ごもる。
「参ったなあ……今まで全然恥ずかしいと思わなかった言葉が、飛島さんを前にすると、何だか恥ずかしく感じてしまうんです。すいません」
あまり表情を変えない虫屋が、めちゃくちゃ照れている。
それでなんとなく察しがついた。
そうだよね、虫は人間みたいにデートする時間なんてないから、相手が見つかったらすぐそうなるよね。
聞いた自分も質問の意味を理解して、ドキドキ。
さらに、くっついている右側から虫屋の体温を感じて、ドキドキ。



