「俺は基本、誰とも合わないんだよ。それは自分でもわかってるから、他人の行動が受け入れにくくてイラッとしても俺の性格が原因だし仕方ないとは思う。
それでもあれは……石坂さんは無理」

「そんなになんですか……どういう感じですか? 私まだ会ったことなくて」

ついにはデスクに突っ伏してしまった吉井さんがぼそぼそと言う。

「騒音系。俺と社長が話しててもグイグイ割り込んでくるし、無視しててもひとりでしゃべって笑って、〝超ウケるー〟とか……俺ああいうのマジ無理ー」

石坂さんの口調を真似てか、語尾を伸ばした吉井さんに苦笑いを浮かべながら、バッグのなかを漁る。

そして目当て紙袋を見つけると、それを吉井さんのデスクに置いた。

「なにこれ」
「久遠さんが泊まってるホテルのプリンなんですけど、結構有名らしいですよ。人見知りの吉井さんに初対面の相手と数時間ふたりっきりっていう過酷な思いさせちゃったのでお詫びにと思って」

頭を起こした吉井さんが、紙袋の中からプリンをとりだし「へー」と眺める。

「ホテルのプリンとか高そう」
「ひとつ450円です。最初、三つセットの値段かと思って二度見しました」

「うわぁ……佐和さんにもらわなきゃ一生食わないとこだった」
「冷蔵庫入れておきますか?」

珍しそうにプリンを眺めていた吉井さんが「うん。お願い」と答える。

渡されたそれを冷蔵庫に入れ席に戻ると、社長が「それ、実費か?」なんて言うから顔をしかめた。