「ここの天井、変わってますね。美術館みたい」
「そうだろ。しかも一ヵ月で柄が変わるから、それ楽しみに来てる客もいるらしい」

知らなかっただけに「へぇ、そうなんですか」と驚くと、社長が天井を見ながら言う。

「ここの天井に使用されてるデザインは、若いクリエーターが描いてるんだと。展示場所を貸してるようなもんだな。
著者には金払わせないで飾ってるから、クロス代は久遠側が出してるわけだけど、天井見たさにくる客もいるから逆にプラスだって話だ」
「へぇ……」
「こういう絵とかは金出して個展とか開けないと発表の場も限られるから、ネットで募集かけて選んでるらしい」

サラダとスープを持ってきたボーイさんが「失礼します」とお皿をテーブルに置く。

それが終わるのを待ってから、社長がまた天井を見て話す。

「ここは金持ってる人間がくる場所だし、天井のデザインを気に入って買い取る客も珍しくない。……ああ、もちろん客の希望するサイズに直してな。
買い手がついた場合は、買い取り額から何割かが手数料として久遠側に入る仕組みだっつーし、まぁ、うまいことやったよな」

フォークを持った社長が「軌道に乗るまでは大変そうだったけど」と言うから、もしかしてと口を開く。

「それをしたのって、久遠さんなんですか?」

これだけ社長が詳しいってなると、理由はそれしか考えられない。
私の予想通り、社長は「ああ」とうなづいた。

「こういう提案は初めてだったからか企画通すまでも結構反対があったらしいし、このシステム始めてからも最初の一年はマイナスだったから文句も出たっつってたけどな。今は反対するヤツはいなくなったってさ」

「へぇ……久遠さん、きちんと仕事してるんですね」

私もフォークを持ち、運ばれてきたグリーンサラダを口に運ぶ。