眠れぬ王子の恋する場所



「だって、立場的に特定の人と付き合うとか面倒そうじゃん。久遠さんのうしろにあるものを欲しがって寄ってくる人もいっぱいいるだろうし。
だったら、したくなったときにお金で買った人と割り切った関係持った方が楽でしょ」
「……なるほど」

久遠さんと私の関係がバレたわけじゃなく、ただそういう意見ってだけか……とホッと息をつく。

そして、ああ、そうかなるほど、と頭のなかで繰り返した。

久遠さんが、なんで私なんかと関係を持ったのかがわからなかった。

正直、久遠さんの前で可愛げのある態度をとっていない自信があるし、久遠財閥の御曹司なら両手に花どころか、両手に花束だろうにって。

でも……そうか。私だったら〝便利屋〟だから、お金で割り切った関係が持てると思ってのことだったのか。

そう思ったら急に合点がいき、もやもやしていたものがスッと軽くなる。

実際には、私はお金でそういうことはしないんだけど……まぁ、久遠さんが勘違いしてるならそれでいいか。

お金じゃないなら、じゃあなんで寝たんだって聞かれても、私も答えがわからなくて困るから、そのまま勘違いさせておいた方が面倒くさくならなくていい。

……でも、あれだ。
久遠さんが、本当に私をそういう類の商売をしているって勘違いしている場合。
支払い先を聞くために社長に連絡してきたりしたら困るかもしれない。

久遠さんとそういう関係だって社長にバレるのは気まずいとか、それどころの話じゃ済まない。

そこまで考えてから、久遠さんに口止めをしていないことに気付く。

今からでも連絡を……っ、と携帯をバッと取り出してから、連絡先を知らないことを思い出し、頭を抱えたくなった。