「……なに、その格好」

二十時過ぎに部屋に戻ると、私を見るなり久遠さんが聞いた。

ソファに座り、書類片手にこちらに視線を向ける久遠さんを見て「仕事です」と答える。

「披露宴の人数合わせで、新郎の友人として出席してきたんです」

今、私が着ているのは普段ではなかなか着ないタイプのキャミワンピだ。

光沢のある紺色のワンピースは胸の下に切り替えがあって、そこからスカートが広がっている。

肩丸出しは抵抗があるから、上には半袖で胸のあたりまでしか丈のない白いカーディガンを羽織って出席した。

ワンピース自体は紺色にしても、白を着るのはマズイかな……と少し心配したけれど、同じような格好の人が何人か見受けられて安心した。

「新郎の友人って、急な欠席者でも出たのか?」

「いえ。新婦側の招待客の方が多いとかで、そのバランスをとるためって話でした。
新郎側が見栄を張りたいんだろうって、社長は言ってましたけど……招待客が四百人以上の大きな披露宴で、両家ともに資産家らしいので、そういう事情もあるんですかね」

うちの会社に頼んでくるくらいだから余程なんだろうな、と思いながら言うと、久遠さんは〝くだらない〟とでも言いたそうに眉を寄せ、ため息を落とす。

そういう、大人の事情みたいなものは久遠さんの方が詳しいだろうし、身に覚えもあるのかもしれない。

「久遠さんは、今日夕飯は外で食べるって話でしたけど、いつ帰ってきたんですか? ネクタイ外してないの、珍しいですね」

いつも、仕事で外に出ても戻ってきたら一番に外すのに……と思い見ていると、久遠さんは今気付いたみたいに「ああ」と呟き、ネクタイに手をかける。