僕は、家にあった小さい懐中電灯を一応持って学校に行った。


夕方になると皆が次々帰って行く。


しかし、五時過ぎに見回りに先生が校舎を廻ると村本が言う。


村本は、前からこの計画を実行しようと考えてたようだ。



二人で屋上に上がる階段の奥で身を隠した。


村本は、大きなバックを持っていた。



僕は卒業前の男二人が薄暗い階段の奥で身を隠してる事が可笑しくて何度か笑いそうになるのを堪えた。


数学の教師がぶらぶらと歩いて来るのが見えたが向こうは僕達等にまるで気付いてなかった。


一応ルールだからやってるという感じで何度か股間を掻いたりしていた。


教師が去ると村本は、懐中電灯をバックから出すと屋上に上がる扉を見ていた。


扉は観音開きのような形で取っ手が付いていてその回りをぐるぐると鎖が回っていた。


大きな南京錠で取っ手を閉めていたのだ。



しかし、厳重なようで良く見るとかなり錆びていて長年誰も見てこなかった事が分かった。


村本は、バックからノコギリを出すと巻かれた鎖を切り始めた。



金切りノコという物だった。



僕は、村本の懐中電灯と自分で持ってきた懐中電灯とで村本の手元を照らした。


村本は、僕の懐中電灯を見ると良いなあと言うと下に行って暖かいコーヒーを買ってきてくれと言った。


屋上で飲むコーヒーは上手いぞと笑うと僕の懐中電灯を口にくわえた。



一階まで誰にも見られないように降りると自販機でホットコーヒーを買った。



急いで上がってみると村本が階段の所に座って笑っていた。



「尚樹、こりゃ相当ボロいな見てみろ。」


扉を見て思わず笑った。




鎖は腐蝕していて簡単に外れたようだ。


所々切れていた。


南京錠も取れていた。