村本は、借りた本の感想を的確に語った時には辛辣に著者をこき下ろした。


そういう村本が僕は好きだった。



村本が何時ものように部屋に来て煙草を吸いながらもうすぐ卒業だけど、何か残したいよなと言った。



村本は、ヤンキーのボスでもあって別に何も残さなくても村本伝説が残るじゃないかとからかい気味に僕は答えた。


「尚樹さあ、そういう問題か?
俺はヤンキー何てのは頭の悪い奴がやってると思ってる。
テレビでは美少年がやってて変な正義感があったりするが実際は違うだろう。

やることは姑息で汚くてダサいよ。」



村本も他の同級生と同じように僕の事を名前で呼んだ。



僕は村本の言う事を肯定するように頷いた。




「女の子の求めてるヤンキーはあんなのなんだろうな。ああいうテレビを見てると悪い冗談かと思うよ。


そうだろう。それに三年間で心から燃えたとかあったか?バイクでギリギリを攻めてる一瞬だけはあったかもな。


喧嘩で負けるんじゃないかって時の一瞬だけはあったかもな。


女と初めてした時は有ったかもな。一瞬だけはあったかも知れないけど、三年間を色に例えたら俺は灰色だよ。」




「それはそうだけど何を残すんだ?何処かに村本参上とか書いておくかよ。」



笑いながら言った。



すると村本は、真面目な顔をして返して来た。



「尚樹お前は、そういうけど、何とか参上とかの落書きを最初にやった人は多分興奮したと思うよ。違うかな?」



良く考えてみて確かにそうだなと答えた。


村本の言い方には何かしら痛々しいような物を感じた。



僕達の三年間はそういう痛々しい感じを耐えたような三年間だったのかもと思えて来た。


若さの痛々しさと言って良いのかも知れない。