「ダル!まだなの!?」

家族旅行をするべく、未だ準備の出来ていないダルを私は急かしていた。

家族旅行と言っても、旦那とは3年前に離婚している。

息子と2人っきりの旅行だ。


時計を見る。

飛行機の時間が迫っていた。

「ママ‥やっぱり行くの止めよう…。」

突然ダルが呟いた。

「何を言い出すの!?貴方が行きたいって言い出したんでしょう!?
ママ、あなたのために忙しい仕事を切り上げて休みをとったの!今更わがまま言わないで!!」

ダルの代わりに素早く用意を済ませ、強引に彼の手を引いて家を後にした。

車に乗り込み、アクセル全開で飛ばす。

信号待ちでは時計と信号とを交互に見、車内にはカツカツカツ‥!という荒々しい爪の音が響く。

「ねぇ…、ママ‥。なんだか嫌な予感がするんだ…。」

「貴方は黙ってなさい!」

赤信号の束縛が解けた瞬間、私は急発進をして空港へ向かった。