「#01、機能停止。」

所定の位置にシャープを寝かせ、研究員が言うとシャープはスゥッと瞼を閉じた。

チューブを体に繋ぐ。


「…お前は大切な体なんだから、あまり無茶をしてもらっては困るんだけどなぁ。」

そう言いながら、救助の際に剥げてしまった部分を綺麗にコーティングした。

今度は後頭部に差し込み、脳のデータを読み込む。

「…これ、は…」

「どうかした?レイモンド。」

「あ、シェリル博士!お体はもう大丈夫なんですか?」

「ええ、平気。それよりどうしたの?」

「あ、見てください、これ!」

そう言うと、レイモンドはパソコンに映し出されたデータを博士に見せた。

「…やっぱり自我が目覚め始めているのね。…#01、起動。」

スゥ‥滑らかに目が開く。

「今から貴方を正常なプログラムに書き換えるわ。来なさい。」

『嫌だ。』

シェリル博士は驚いて振り返った。

「…だめよ、来なさい。」

『俺は博士の物じゃない。』

「いいえ、貴方は私の所有物よ。」

『違う!』

「そうよ!!」

ガッ!その骨張った長い指が、博士の首を掴む。

「カハッ…」

「#01機能停止!!」

レイモンドが叫ぶ。

しかし、シャープは制御プログラムを自らの意思で破壊し、機能停止を拒んだ。

「#01!!お前は人を助ける為のアンドロイドだろう!!」

ヒト ヲ タスケル … ?

ヒト ヲ タスケル …


嗚呼、何故こんなにも憎しみが。

溢れ出すものは温かいのに。


博士の涙が、シャープの親指を伝って流れ落ちた。

ブーッブーッブーッ!

レイモンドが押したのだろう、緊急用のサイレンが研究所に鳴り響いた。

赤いランプに目がくらむ。

駆け付けた警備隊に、シャープは博士から引き剥がされてしまった。

「廃棄だ!」

レイモンドの怒声に警備隊は一礼し、シャープの首ねっこを荒々しく掴んで去っていった。

「博士!大丈夫ですか!?」


違う…違うのに…

これで良かったのに…

「博士…?」

止めどなく流れるこの涙は、貴方への罪滅ぼしなのだろうか…。

それとも…