『…?』

通常応答時間よりも随分長い、とシャープは小首を傾げて見上げてきた。

こういう“間”も、プログラミングしてある精巧なアンドロイドだ。

あらゆる情報を持つ彼が、自分の知らない、人の感情についてを知りたがるのもおかしいことではないのかもしれない。博士は自分を少しばかり強引に納得させ、気を取り直したように明るく言った。

「私はね、称賛を得る為に貴方を作った訳じゃないの。…もっと言えば、称賛なんて要らないわ。」

『…内蔵データによると、その結果は明らかにおかしい。
博士…もしかして故障か?』

「プッ…あははははは!」

シェリル博士は腹を抱えて笑った。

その様子を、少し戸惑った様子のシャープが見ていた。

『博士…?』

「ごめんなさい…。」

クスクスと笑いながら、博士は出てきた涙を指ですくった。

「心配そうな顔で『故障か?』なんて訊くから…。」

『心配だ。』

間を空けずに、少し強い口調でシャープは言った。

その瞳は、真っ直ぐに自分を貫いている。

少し冷たい程の美しい顔立ちのシャープに、真剣な顔で見つめられるとなかなか迫力がある。

「…ありがとう、シャープ。私は正常よ。貴方が気にする必要は…」

蘇る記憶 事故の現場
愛する息子の笑顔

封印したはずの思い出したくない過去が、凄まじい勢いでフラッシュバックする。

『博士…!?』


ごめん…

ごめんなさい…

許して、ダル…