スゥ‥滑らかに、その目は開いた。

「…あら、お目覚めかしら。」

白衣に身を包んだ女性が近付いてくる。

しかし、彼は身構えることもなく、近付いてくる女性をぼぅっと見つめた。

「気分はどう?」

『…ああ、悪くない。』

声も、いわゆる機械音というものではなく、本物の人間のようだ。

何よりこの顔立ち。

透き通った肌に人工毛とは思えぬ柔らかそうな銀色の髪、瞳は蒼く、スッと伸びた鼻、色っぽい唇。

細身の筋肉質に、足の長い長身。

誰もが目を奪われる外見である。

「私はシェリル。貴方を作った人間よ。」

『…よろしく博士。』

博士とは名乗っていないにも関わらず、素早い状況判断、順応性も高いようだ。

「ええ、よろしく。
貴方は#01、通称シャープよ。」

『シャープ…。』

「そう、シャープ。年齢は17歳。」

『それはプログラムされている。』

シャープと名付けられたアンドロイドは、ぶっきらぼうに言い放った。

というよりも、感情が込もっていないように聞こえる。

「…そうね、初期データは綿密にプログラミングしたし…。
貴方に無かったのは名前だけだったものね。」

『俺は災害用アンドロイド。
俺の任務は人を助けること。
俺に出来ないものは無い。』

そう言うと、シャープは体に繋がれていたチューブをブチブチブチッ…!と引き剥がした。

「ちょっ…シャープ…!」

『トラックと衝突してバスが炎上した。陣痛で動けない妊婦が取り残されている。』

それだけを言い残し、シャープは掛けてあった黒いジャケットを羽織ると、研究室を強靭なスピードで走り去ってしまった。


「…扱いづらいのはあの子並みね。」

フゥ、鼻から抜けた溜め息が、一人取り残された研究室で音を立てた。