「なにあれ……」
小さく呟いた先には、女子。
女子、女子、女子の姿。
廊下から教室の中を覗き込んでは、「きゃー!」と黄色い声を上げている。
これ、は……。
何となく嫌な予感がした……っていうか、これを見れば確実に“それ”だけど。
「すごいねー」と、隣で苦笑するありさと一緒に、人波を押し退けて教室の中へと入った。
すると、
「一緒のクラスとか嬉しいー!」
「今日の放課後とか暇じゃない!?」
教室のちょうど真ん中あたり。
ひとつの席を囲んで、女子達がきゃあきゃあと騒いでいた。
その席に座る人は……篁 蒼空(たかむら そら)。
きっとこの学校で、彼の名前を知らない人はいない。
それくらい有名なのは、まるでテレビから出てきた芸能人のようなルックスのせい。
すらりと伸びた長い手足に、男の子くせに小さな顔。
だけど、くっきりとした二重の目に、顔立ちははっきりしていて、圧倒的な存在感。
たいていの女子は、彼のことを好きになる。
……だけど。