《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「苦しい事とか、悲しい事とか、ひとりぼっちで怖くてさみしくて不安な事……もちろんハリさんの事全部を理解するなんて出来ない。けどわたしにもほんの少しなら、わかるから。……なのにわたし、あの時どうする事も出来なくて、、」

 己のせいではないと言うのに、眉を下げて後悔を語る彼女の肩を優しく抱き寄せる。

「スズラン…」

「わたし、何も出来ずにただ困惑する事しか出来なかった。ほんとうはもっと何か出来たんじゃないかって……だから心配なの! だってあんなに大きな暗闇の中にひとりでいたら……真っ暗な場所で、本当にだれもいない怖い夢の中で……ひとりで、、なにもかも諦めてしまったら…っ」

 歯痒そうに気持ちを打ち明けるスズラン。今すぐにでもその不安な感情を消し去ってしまいたい。

「そうはならない…。俺がさせないよ」

「うん……助けて、ライア」

 ラインアーサの胸に凭れかかるスズランの身体は本当に華奢で、その肩は僅かに震えていた。

「俺も〝あの日〟からずっと捜してたんだ。……そして漸く見当がついたんだ」

「ほんとう?」

「見つけたよ、ハリの所在を」

 ハリを心から心配しているスズランを安心させたくて、大きく頷いた。

「……よかった」

 慈しむ様に腹部を撫でるスズラン。その手の上に自身の掌を重ねると、あたたかな気持ちが湧き水の様に溢れてくる。