「ああ、もう。本当…っ」

 ラインアーサはそっと唇を離すとそのままスズランの首筋に顔を(うず)めた。

「ひゃっ! ……ライア?」

「参ったな……もう一回、してもいい?」

「っ!」

 熱っぽく囁かれて拒める筈がない。追い打ちを掛ける様に耳元で名前を呼ばれる。

「スズラン…」

「耳…っだめ…」

「ふふ……耳、弱いね」

 少し意地悪そうに笑みを含んだラインアーサの言葉に、無駄と分かっていても抵抗する。

「だ、だめ…!」

「可愛い」

「やぁ…、んん…」

 どんなに身動ぎしても膝の上では逃げ場はなく、再びくちづけの雨に溺れそうになった。



「───覚えてる? 俺が初めてスズランにキスした時の事」

「お、おぼえてるよ! けど、あれはからかわれてるんだと思ってたし……その、わたし、キスなんてはじめてだったから…」

「ふーん? でも俺の初めては幼いスズランに奪われたんだけどな?」

「…っそんなの知らないもん」

「いいよ。俺の大事な思い出って事にしとくから」

「むぅ……なんかずるい」

「ずるくない。それに、からかってなんかない。俺はスズランの事を愛しいと思ったから唇を奪ったんだ。もちろんあの日も───」