《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

【今回のお話には暴力や流血などの場面が含まれます】
殴る等の暴力や刃物等での傷など、流血表現が含まれます。苦手な方はご注意ください。



 ひどく懐かしい、優しい声が言った。


「───お願いがあるの。あなたはこの子を連れて安全な所へ…」

「なっ!?」

「私はここに残らないと」

「そんなの駄目だ…っ、君をこんな所に置いて行けない!」

「でも…、じゃないとこの子が…! 私そんなの絶対に嫌! 耐えられないもの…」

「君と僕で守ればいいっ…、それに何故君が一人でやらなければいけない…? 何故君なんだっ…」

「……大丈夫、一人じゃないわ! ガトーレ司祭が来てくれる筈。だからきっと上手くいく。この世界をこんな風にした奴を懲らしめてやるから!」

「……どうしても…?」

「誰かがやらなきゃ…」

「リリィ!」

「スゥを……スズランをお願いね。この子、あなたに似てとっても泣き虫なんだから…」

「リリィ……必ず、生きて…っ」

「大丈夫よ。アス、スズラン。私、あなた達の為なら頑張れるわ──・・・」

(だめ! だめだよママ。パパはさみしがりなの。ママがいなきゃだめなの! スゥだってやだよ……おねがい、いかないで!!)

 スズランは強烈な眠気に抗いながら、恐ろしくてたまらない筈の〝(ラヨス)〟に祈った。しかし怒り狂う様な稲光と雷鳴がその祈りを叶えることはなかった───。