「スズラン。奥の部屋でこの外衣(ガウン)に着替えてくれ。今着てる衣服は洗ってもらうからこの(とう)の籠に」

「っ…あの……まって!」

「大丈夫だよすぐに乾くから。それに身体も冷えてる、このままじゃあ駄目だろ」

「う、うん」

 強引な流れに躊躇するが、ライアに籠と外衣(ガウン)を渡され奥の部屋へと押し込まれてしまう。仕方なく濡れている給仕服を脱いだ。転んだ所為か思いのほかどろどろに汚れている。

「わたしこんなにひどい格好だったの? どうしよう! 長椅子(カウチ)とか廊下とか汚してないかな…」

 別の不安が募り、焦る。とりあえず渡された外衣(ガウン)に着替えるも申し訳なさでいっぱいになった。せめて汚れた服位は自分で洗濯しようと思いついたがスズランが軽く悶絶している間、毛布と脱いだ服を入れた(とう)の籠は既に回収されていた。

「!! いつの間に…?」

 おずおずと奥の部屋から出て、ライアのいる部屋の隅に身を置く。部屋を見渡すと女性の姿はなく、ライアも別の服装へと着替え終わっている。

「……スズラン? どうした。そんな部屋の隅じゃなあくこっちにおいで?」

 スズランに気が付くとライアは手招きしながら優しく声をかけてくれた。