《完結》アーサ王子の君影草 中巻 ~幻夢の中に消えた白き花~

「確かに…! ハリさんの言う通り、わたしはまだまだ未熟者です。そんな事自分が一番よくわかってます。でもライアの優しさが本物かどうか位、わかります…。なのに、その優しさを無下にしてしまった事。今更後悔しても遅いけど、わたしはライアにっ…ごめんなさいって伝えたい…っ」

 ハリの言葉を遮り、思いの丈を並べるも次第に自信がなくってゆく。いや、もっと特別な〝何か〟を伝えたかった筈だがその部分が黒い何かで覆われて出て来ない。更に、反論出来ない程の正論で言いくるめられる。

「だから何だと言うのです。それを伝えて何か変わるとでも? それとも貴女はライアに有益な何かを齎す事が出来るのですか?」

「っ…」

 スズランが正直に謝罪した所で今更何も変わる事はない。それはただの我儘で身勝手な行為だ。しかしこのままでは想い焦がれて苦しいのだ。許されたい訳では無い。ただ非礼を詫びて、素直に気持ちをぶつける。それ自体は悪い事ではない筈だから。

(あれ…? 謝りたいのは確かだけど、もっと別の大切な想いが……)

「……はあ…。分かりました。理解に苦しみますが、そう仰るなら彼の居場所をお教えしますので貴方の〝想い〟とやらを伝えてみては?」

「っ!? 」

「今は恐らく旧市街にあるAnochecer(夕暮れ) tierra natal(の故郷)という酒場(バル)に居るかと。しかしあの辺はかなり物騒です。貴女が一人でたどり着ける様な所では…」